いよいよ待望の日が到来
朝方やや曇天の模様であったが私の心は“雨降らば降れ、
風吹かば吹け”の心境であった。
同じ真実の道を求め会う者同志の旅行とはかくも楽しいものであろうか。
天候の不順等はこの際眼中になく、さしずめ
正信偈の
「譬えば日光の雲霧に覆はるれども雲霧の下明らかにして闇無きが如し」(
正信偈)
とでもいったところか。
バスの中で先生のぺーソス溢れる唄、
お前と俺とは同樹の桜、
同じ
親鸞会の庭に咲く、
咲いた花なら散るのはさだめ、
笑って死のうぜ法の為の名文句を耳にし、
暫し感激に咽びながら、
絶景ビワ湖—吉崎—日本海を横にみて最高のゴキゲンで山中温泉に到着、
(午後一時三十分)
本部より合流した一行(富山、石川支部)の方々の出迎えを受け、
改めて来てヨカッタナアーと心中感ずるものあり、
全員こぞって席に着いた夕食は我々の親睦を一層深め、
また青年部のブッツケ本番による寸劇も仲々心憎いものがあった。
夕食後正に山中温泉の夕闇は若人の血潮を
ロマンティックなムードにひきおこし、
暫しダンスに興じていた私は、
ふと「
欲望の為にならこんな真険になるのに、
なぜ真実の道へは遠のきたがるのか」
という陰の声を聞いたような気がして、戦慄を覚えた。
既に時刻は真夜中を過ぎ、
季節はずれの雪がちらつき、渓流に溶けこんでいった。